季節の移り変わり。
春は新緑が芽吹く夏の季節に嫉妬している。
夏は実り豊かな秋の季節に嫉妬している。
秋は幻想的な冬の季節に嫉妬している。
冬は新たな門出の春の季節に嫉妬している。
夏は雪景色の凍った冬の湖を夢見ている。
秋は鮮やかな春の花々を夢見ている。
冬は暖かな夏の日差しを夢見ている。
春は夕日に染まる黄金色の秋の穂を夢見ている。
秋は時の流れと肌寒さを感じ、夏の陽気を懐古している。
冬は風に流れる侘しさを感じ、秋の夜長を懐古している。
春は手元を離れた空虚さを感じ、冬の結束を懐古している。
夏は燦爛たる騒々しさを感じ、春の温和を懐古している。
冬は別れから出逢いを願い、
春は出逢いから繋がりを願い、
夏は繋がりから親しみを願い、
秋は親しみから一生を願い、
その願いは儚く、露と消え、昇華し、生まれ変わって帰還する。
そしてまた、願いは季節とともに移りゆく。
季節とともに人の心も移り変わり、変わらない過去と想像した未来を想い、願い、忘れ、そしてまた形作って繰り返していく。
僅かに残った涙の結晶は、生きてきた証を艶やかに映し出しながらも、刻々と形を変えて、季節の流れに静かに溶けていく。
涙となって流れた想いはそれぞれの季節を彩り、涙の先に見える景色は、いつか描いた夢や希望を照らしてくれるだろうか。
季節の移り変わり、心の移り変わり。
変わりゆくものを止める手立てはないかもしれない。
それでもまた、ここに戻ってくる。
巡りくる季節とともに、新たな願いをその心に宿して。